2022年3月時点で、61銘柄のJ-REITが上場されています。
J-REITはオフィスや住宅、ホテルなど、様々な不動産に投資して、賃料収入を投資主に分配する、不動産投資信託です。
少額から投資ができ、分散投資も容易で換金性も高いなど、様々な利点を持っています。
でも、たくさんの銘柄があり迷います。
せっかく、投資するのであれば、
- 利回りが高く
- 安定した収益を上げられ
- 値下がりしにくい
銘柄を購入したいですよね。
そのような銘柄を選ぶためには、様々な指標で比較する必要があります。
銘柄を比較する場合は、投資主の利益に直結する分配金利回り、将来の利益になる含み益率など、複数の指標で比較することが大切です。
上場証券であるJ-REITは、財務情報などが詳細に開示されており、様々な指標で容易に比較することができます。
J-REITに投資して6年になる筆者が、銘柄を選ぶための7つの指標について紹介します。
- 高利回りは小規模の総合型J-REIT
- 含み益は将来の利益
- 規模や含み益の成長性も大事
特徴を決める用途比率
J-REITはオフィス、物流施設、商業施設、住宅、ホテルなどの不動産を保有しています。
不動産はその用途により、様々な特徴があります。
主な特徴は次の通りです。
用途 | 特徴 |
---|---|
オフィス | J-REITの主要な投資先、賃料単価が比較的高い |
物流施設 | 郊外に多く、規模が大きい、長期契約により安定した賃料 |
商業施設 | 都市型:賃料が高く景気の影響を受ける 郊外型:地域密着型で景気の影響を受けにい |
住宅 | 場所も規模も多種多様、生活の基盤のため景気の影響を受けにくい |
ホテル | 様々な形態があり、集客による収益のため景気の影響を受けやすい |
なお、J-REITは、保有する用途の数により、次の3つに分かれます。
- 特化型(1つの用途のみ保有)
- 複合型(2つの用途を保有)
- 総合型(3つ以上の用途を保有)
総合型は不動産用途が分散されており、リスクの少ない銘柄と言えます。
しかし、総合型であっても、どの用途の不動産を多く保有しているかにより、銘柄の性質が変わってきます。
そのため、J-REITを選ぶ際には、保有不動産の用途比率を見て、どのような特徴を有するか確認することが大切です。
J-REIT全体の用途比率は次の通りです。
(2022年11月時点)
J-REIT全体では、オフィスが全体の40%を占めています。
購入を検討する場合には、この比率を基準にして
- オフィスが多く収益性が高い
- 住宅が多く景気の影響を受けにくい
など、その銘柄の特徴をつかむことが大切です。
用途比率は、銘柄を検討するために必要な指標と言えますね。
投資口価格を判断するための指標
J-REITは上場されており、日々、投資口価格が変わります。
投資口価格が変わると分配金利回りも変化します。
なお、分配金は、保有する不動産から得られる収益で決まります。
投資口価格が良いか悪いかを判断するにはどうしたら良いでしょうか。
関連のある3つの指標について説明します。
分配金利回り
分配金利回りは、投資主が投資した金額(投資口価格)に対する分配金の利回りです。
株式投資で言う、配当利回りと同じです。
J-REITに投資する理由の一つに、株式より高い利回りであることがあげられますよね。
利回り上位の銘柄は次の通りです。
コード | J-REIT | 分配金 利回り | 種別 | 備考 |
---|---|---|---|---|
8975 | いちごオフィスリート投資法人 | 7.12% | オフィス特化型 | |
3470 | マリモ地方創生リート投資法人 | 5.57% | 総合型 | 紹介記事 |
8958 | グローバル・ワン不動産投資法人 | 5.47% | オフィス特化型 | |
2971 | エスコンジャパンリート投資法人 | 5.42% | 複合型 | |
3451 | トーセイ・リート投資法人 | 5.36% | 総合型 | 紹介記事 |
3468 | スターアジア不動産投資法人 | 5.36% | 総合型 | 紹介記事 |
3487 | CREロジスティクスファンド投資法人 | 5.34% | 物流施設特化型 | |
3492 | タカラレーベン不動産投資法人 | 5.30% | 総合型 | 紹介記事 |
3476 | 投資法人みらい | 5.28% | 総合型 | 紹介記事 |
2989 | 東海道リート投資法人 | 5.27% | 総合型 | 紹介記事 |
(2022年12月30日時点)
上位の銘柄の利回りは5.3~7.1%となっています。
利回りの高い銘柄は、小規模な総合型J-REITが多いと言えます。
J-REITの収益構造は、不動産賃料及び売却益であり、銘柄により大きな違いはありません。
そうであれば、利回りの高い銘柄を選ぶのもJ-REITの買い方の1つです。
特に、分配金利回りは、投資家の利益に直結しますので、重要な指標の1つと言えます。
なお、分配金利回りを見る場合は、不動産の売却益などで、一時的に高くなっていないか注意が必要です。
いちごオフィスリート投資法人は、2023年4月期の分配金が一時的に多くなっているため、高い利回りを示しています。
長期投資を行う場合は、一時的な要因を除いた利回りで比較することが大切ですね。
NOI利回り
NOI利回りは、不動産の取得価格(あるいは簿価)に対する、営業純利益(賃料-諸経費)で計算されます。
不動産がどの程度の利回りで収益をられるかを示す指標です。
一般的にJ-REITは、借入金と出資金で不動産を購入しますので、不動産取得時は
- NOI利回り<分配金利回り
となります。
しかし、不動産の減価償却が進むと不動産取得価格(簿価)が減るため、
- NOI利回り>分配金利回り
となります。
つまり、NOI利回りは減価償却の状況により、値が変わるため
- 利率だけでは判断できない
- 分配金の良し悪しに直結しない
ということになります。
よって、通常は、あまり気にしなくても良い指標だと思います。
ただし、公募増資で購入を考える場合は、検討の余地があります。
公募増資は
- 新規で物件取得
- 物件のNOI利回りが公表されている
- 借入金、出資額の予定も公開
つまり、NOI利回りから公募価格における分配金利回りが算出できます。
市場価格の分配金利回りと比べ、公募価格の利回りの方が高ければ、購入を検討するという考え方もできます。
NAV倍率
NAV倍率とは、投資口1口あたりの純資産額を投資口価格で割った値です。
投資口価格が純資産額の何倍かを示す指標で、1より小さい場合は割安と判断されます。
株式のPBR(株価純資産倍率)に相当します。
NAV倍率の低い銘柄は次の通りです。
コード | J-REIT | NAV倍率 | 種別 | 備考 |
---|---|---|---|---|
3472 | 大江戸温泉リート投資法人 | 0.56 | ホテル特化型 | |
2972 | サンケイリアルエステート投資法人 | 0.73 | オフィス特化型 | |
8987 | ジャパンエクセレント投資法人 | 0.79 | オフィス特化型 | |
8958 | グローバル・ワン不動産投資法人 | 0.80 | オフィス特化型 | |
8976 | 大和証券オフィス投資法人 | 0.82 | オフィス特化型 | |
8972 | ケネディクス・オフィス投資法人 | 0.83 | オフィス特化型 | |
3463 | いちごホテルリート投資法人 | 0.83 | ホテル特化型 | |
3296 | 日本リート投資法人 | 0.84 | 総合型 | |
3488 | ザイマックス・リート投資法人 | 0.84 | 総合型 | 紹介記事 |
3309 | 積水ハウス・リート投資法人 | 0.85 | 総合型 |
(2022年12月30日時点)
最近はリモートワークの普及により、オフィスに出社する人が少なくなりました。
このため、オフィスを保有するJ-REITの投資口価格が下がり割安になっています。
理由があって割安な銘柄は、その要因が今後どうなるかを考えて選定すると良いと思います。
特に要因が見当たらない場合は、割安で放置されている可能性があるので、購入を検討するチャンスかもしれません。
将来の利益や成長性を見る指標
利回りが高く割安な銘柄でも、それが、安定的に続くとは限りません。
やはり、資産を成長させ分配金を増やしてくれる銘柄を選びたいですよね。
そのためには、保有資産に付加価値をつけたり、低コストで効率良く資産を増やしている銘柄を選ぶ必要があります。
将来の利益や成長性を見るための3つの指標について解説します。
時価総額
時価総額とは「投資口価格」×「投資口数」で計算される、J-REITの規模を示す指標です。
規模が大きい銘柄は、収益も大きなり、スケールメリットを活かして管理コストの低減が図れます。
また、対外的な評価も高くなり、グローバル指数に採用されるなど、資金が流入しやすくなります。
時価総額の大きい銘柄は次の通りです。
コード | J-REIT | 時価総額 | 種別 | 上場年 | 分配金 利回り |
---|---|---|---|---|---|
8951 | 日本ビルファンド投資法人 | 1,000億円 | オフィス特化型 | 2001年 | 3.91% |
3283 | 日本プロロジスリート投資法人 | 847億円 | 物流施設特化型 | 2013年 | 3.21% |
8952 | ジャパンリアルエステイト投資法人 | 799億円 | オフィス特化型 | 2001年 | 3.93% |
3462 | 野村不動産マスターファンド投資法人 | 769億円 | 総合型 | 2015年※ | 4.03% |
8953 | 日本都市ファンド投資法人 | 732億円 | 総合型 | 2021年※ | 4.33% |
3281 | GLP投資法人 | 713億円 | 物流施設特化型 | 2012年 | 3.81% |
8984 | 大和ハウスリート投資法人 | 681億円 | 総合型 | 2006年 | 3.82% |
8954 | オリックス不動産投資法人 | 515億円 | 総合型 | 2002年 | 4.08% |
3269 | アドバンス・レジデンス投資法人 | 470億円 | 住宅特化型 | 2010年※ | 3.38% |
8960 | ユナイテッド・アーバン投資法人 | 467億円 | 総合型 | 2010年※ | 4.12% |
※合併により誕生
(2022年12月30日時点)
時価総額が大きな銘柄は、大型の物流施設を持つ銘柄や古くからあり資産を増やしてきた銘柄、合併により規模を拡大した銘柄です。
機関投資家からの買い入れも多く、投資口価格が上昇しており、分配金利回りは低い傾向にあります。
そう考えると、現在の規模が小さくても、資産の拡大を図っている銘柄は価格の上昇が期待できるかもしれません。
含み益率
含み益率とは不動産の取得額と評価額との差がどの位あるかを示す指標です。
含み益率が高い銘柄は、不動産の売買時に大きな利益を上げることができます。
その利益は、投資主に分配されたり、新たな資産を購入することに使われます。
含み益率の高い銘柄は次の通りです。
コード | J-REIT | 含み益率 | 上場年 |
---|---|---|---|
8967 | 日本ロジスティクスファンド投資法人 | 57.3% | 2005年 |
3269 | アドバンス・レジデンス投資法人 | 53.8% | 2010年※ |
3226 | 日本アコモデーションファンド投資法人 | 45.9% | 2006年 |
8957 | 東急リアル・エステート投資法人 | 41.1% | 2003年 |
3281 | GLP投資法人 | 36.9% | 2012年 |
8985 | ジャパン・ホテル・リート投資法人 | 35.5% | 2006年 |
8952 | ジャパンリアルエステイト投資法人 | 33.3% | 2001年 |
8954 | オリックス不動産投資法人 | 32.8% | 2002年 |
3283 | 日本プロロジスリート投資法人 | 31.7% | 2013年 |
8976 | 大和証券オフィス投資法人 | 30.3% | 2010年 |
※合併により誕生
(2022年12月30日時点)
含み益率は、地価の上昇や不動産の付加価値を追加することにより上昇します。
ですので、含み益率が高い銘柄は、早くから上場している銘柄が多いです。
なお、含み益は、そのままでは、分配金に反映されません。
物件を売却した場合には、含み益が利益となり、分配金を増やします。
将来の可能性を考えると、含み益率が上昇している銘柄を選択するのも良いかもしれません。
格付け
格付けとは、格付け会社が責務の履行能力を評価し、比較できるように記号付けをしたものです。
対外的な評価や信頼性を表す指標として使われます。
高い格付けは、低い金利で借り入れができたり、機関投資家の投資対象になるなどの利点があります。
格付けの高いJ-REITは、次の通りです。
コード | J-REIT | JCR | R&I |
---|---|---|---|
3283 | 日本プロロジスリート投資法人 | AA+ | AA |
8951 | 日本ビルファンド投資法人 | AA+ | AA |
8952 | ジャパンリアルエステイト投資法人 | AA |
(2022年12月30日時点)
格付けAAは「信用力は極めて高く、優れた要素がある」という意味です。
格付けの記号は、最上位の「AAA」から最下位の「D」まで9~11段階で表されます。
一般的に「AAA」「AA」「A」の上位3段階の格付けが信用力が高いと判断され、投資適格として扱われます。
J-REITの格付け取得状況は次の通りです。
格付け | JCR | R&I |
---|---|---|
AA+ | 2 | 0 |
AA | 21 | 3 |
AA- | 14 | 11 |
A+ | 7 | 4 |
A | 6 | 3 |
A- | 2 | 4 |
合計 | 52 | 25 |
(2022年12月30日時点)
注:格付け記号の「+」「-」は同一等級内での相対的な位置関係を示します。
J-REITの8割以上の銘柄が格付けA以上ですね。
それだけ、J-REIT自体の信用度は高いと言えます。
なお、格付けが「AA」以上になると日本銀行の買い入れ対象になるので、価格の維持が期待できます。
まとめ
- 用途比率で特徴をつかむ
- NAV倍率が低い銘柄は割安
- 規模や含み益の成長性を見る
J-REITを購入銘柄を検討する場合に比較する7つの指標について解説しました。
J-REITは信頼性が高く、分配金利回りも期待できます。
不動産のみで収益構造が単純、情報開示性が高く、比較しやすい投資先だと思います。
分散投資の一角に組み入れて見てはいかがでしょうか。
以上、参考になれば幸いです。
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