J-REITは、様々な不動産を保有し、その賃料収入や売却益を投資主に分配する上場投資信託です。
マンションなどを直接購入して貸し出す不動産投資に比べ、下記の利点があります。
- 少額から投資が可能
- 換金性が高い
- 手間がかからない
- 複数の不動産に分散投資できる
- 利益の殆どが還元される仕組み
利点は多いですが、リスクはないのでしょうか
J-REITは、不動産の投資信託という性質上、不動産に加え、証券としてのリスクもあります。
可能性が低いリスクもありますが、知っていることにより、素早く対応することができますよね。
上場不動産投資信託(J-REIT)の主要な5つのリスクについて、その対策を含め紹介します。
- リスクは不動産の種類により異なる
- 災害リスクは地域分散で対策
- 上場廃止は合併が理由
景気変動リスクと対策
物価や経済情勢により、不動産の需要や価値が変動すると、J-REITの収益に影響がでます。
しかし、景気変動の影響は一律では無く、不動産の種類によって違いがあります。
影響の受けやすい不動産はどのようなものでしょうか。
影響を受けやすい不動産
景気変動の影響を受けやすい不動産には
- オフィス
- ホテル
- 商業施設
があります。
これらは、不動産を使い、営業や事業を行っているため、景気の変動を受けやすいと言えます。
- 企業が倒産してオフィスの空室が増える
- 旅行者が減りホテルの予約が少なくなる
- 節約思考となり物を買わなくなる
このような状況では、不動産の家賃が払えなくなり、J-REITの収益も減ってしまいます。
では、景気変動の影響を受けやすい不動産には、投資しない方が良いのでしょうか。
そんなことはありません。
景気の影響を受けやすいということは、景気が良い時には儲かるということです。
そうすると、J-REITの収益も増えます。
ですので、特徴を捉え、リスク分散していくことが大切です。
リスク対策
同じ種類の不動産であっても、地域性により、景気変動リスクが異なる場合があります。
- 観光地のホテルと都市のビジネスホテル
- 郊外のスーパーと都心のブランド専門店
観光地にあるリゾートホテルや旅館などは、その地域の景気変動の影響を受けます。
郊外のスーパーは、食品や日用品を取り扱っていることが多く、景気変動の影響を受けにくい商業施設と言えます。
J-REITは少額で様々な不動産に投資できるのが利点です。
J-REITの各銘柄を確認し、特徴の異なる不動産を保有することで、景気変動リスクを軽減することができると思います。
金利変動リスクと対策
J-REITが不動産を取得する場合は、金融機関から借入を行う場合がほとんどです。
金利が高くなれば、利払いが増えますので、その分、収益は減ってしまいます。
金利変動リスクを軽減するためには
- 固定金利で借入を行う
- 信用力を上げる
が考えられます。
固定金利で借入を行えば、借り入れ後に金利が上がる心配はありません。
しかし、固定金利は、変動金利に比べ、金利が高くなる可能性があります。
J-REIT自体に信用力があり、低金利で借入を行うことができれば、そのリスクも回避することができますよね。
信用力はどこで判断すればよいのでしょうか。
J-REITの信用力は、信用会社の格付けで判断することができます。
J-REITの格付け別の銘柄数は次の通りです。
格付 | 格付会社 (JCR) | 格付会社 (R&I) |
---|---|---|
AA+ | 2 | 0 |
AA | 21 | 3 |
AA- | 14 | 11 |
A+ | 7 | 4 |
A | 6 | 3 |
A- | 2 | 4 |
(2022年12月末時点)
- 格付AA:債務履行の確実性は非常に高い
- 格付A:債務履行の確実性は高い
- +,-:同一等級内での相対的な位置
高格付けで、低い固定金利で借入しているJ-REITを選べば、金利変動リスクが小さくできます。
災害リスクと対策
地震、洪水、土砂崩れなど、日本では、様々な災害が起こります。
大きな災害が発生すると
- 不動産が破損し修理費用が発生する
- 不動産として価値が下がる
- 周囲の被害状況により営業できなくなる
など、J-REITの収益に大きな影響を与えます。
しかし、いつどこで災害が起きるかを予想することは非常に困難ですよね。
ただ、災害は一定の地域で発生するという特徴を持っています。
ですので、災害リスクを軽減する為には、離れた場所に不動産を分散することが有効です。
J-REITは、銘柄により、不動産の保有場所に特徴を持たせている場合があります。
例えば、地方に重点投資する
東海地域を主な投資場所とする
J-REITの多くは東京、名古屋、大阪、福岡などの4大都市圏の不動産に多く投資しています。
地方に投資するJ-REITを組み合わせることにより、災害リスクを軽減することができます。
法律改正リスク
J-REITには、様々な法律が関わります。
不動産に関しては、不動産登記法、借地借家法や都市計画法など。
その他にも投信法、税金に関する法律など、多岐に渡ります。
それらの中でも、
- 水道法
- 下水道法
- 浄化槽法
- 消防法
- 建築基準法
などは、改正されることにより、建物の改修等が発生する場合がありますので、J-REITの収益に影響を与えます。
法律の改正を回避することは難しいですが、建築物に関する法律であれば、不動産の種類により適用が異なる場合もあります。
不動産の種類を分散することにより、リスクを軽減することができるのではないでしょうか。
上場廃止リスク
J-REITは東京証券取引所で定められた基準を満たさなくなると、上場廃止になります。
余程のことが無い限り、基準を割ることは無いと思いますが、有るとすれば次の3つです。
- 運用資産の不動産比率が70%未満
- 純資産総額が5億円未満
- 資産総額が25億円未満
保有不動産が災害地域に集中しているなど、資産価値が大きく目減りした場合は、上場廃止になるかもしれません。
ただ、過去に例は無く、基準を下回る可能性は低いと言えます。
過去の上場廃止銘柄
コード | 廃止されたJ-REIT | 上場廃止日 | 廃止理由 |
---|---|---|---|
3298 | インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人 | 2021/11/9 | 私募REIT化 |
3227 | MCUBS MidCity投資法人 | 2021/2/25 | 合併 |
3473 | さくら総合リート投資法⼈ | 2020/7/30 | 合併 |
3308 | ⽇本ヘルスケア投資法⼈ | 2020/3/30 | 合併 |
8973 | 積水ハウス・レジデンシャル投資法人 | 2018/4/25 | 合併 |
3460 | ジャパン・シニアリビング投資法人 | 2018/2/26 | 合併 |
3263 | 大和ハウスリート投資法人 | 2016/8/29 | 合併 |
8982 | トップリート投資法人 | 2012/3/28 | 合併 |
8981 | ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人 | 2011/10/27 | 合併 |
8983 | いちご不動産投資法人 | 2010/11/26 | 合併 |
3229 | 日本コマーシャル投資法人 | 2010/11/26 | 合併 |
8970 | ジャパン・シングルレジデンス投資法人 | 2010/9/28 | 合併 |
8969 | プロスペクト・リート投資法人 | 2010/6/28 | 合併 |
8974 | ラサール・ジャパン投資法人 | 2010/2/24 | 合併 |
8962 | 日本レジデンシャル投資法人 | 2010/2/24 | 合併 |
8978 | アドバンス・レジデンス投資法人 | 2010/2/24 | 合併 |
8980 | エルシービー投資法人 | 2010/1/27 | 合併 |
J-REITはこれまで、17銘柄が上場廃止になっています。(2022年12月時点)
17銘柄中16銘柄は、合併によるものです。
合併による上場廃止の場合は、投資口(投資主の出資)が合併先に引き継がれますので、心配する必要はありません。
なお、最近、上場廃止となった「インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人」の場合は、TOBによる私募REIT化です。
インベスコグループが全ての投資口を買い取ることにより、自分たち専用のREITにしました。
投資主は投資を継続することはできませんが、プレミアム価格で投資口が買い取られたため、損をすることは無かったと思います。
リスク対策
東京証券取引所の基準による上場廃止の可能性は低いです。
上場廃止の多くは、合併によるものですので、
- 合併の条件
- 合併後の投資方針
などを見極めて、投資を継続するかを判断すると良いと思います。
リスクの低いJ-REITの選び方
- 不動産の場所を分散させる
- 複数の種類の不動産に投資
- ホテルや商業施設は地域性を考える
J-REITの抱える5つのリスクとその対策について解説しました。
リスク低減の基本は分散投資です。
J-REITの場合は、不動産の場所や種類を分散させることにより、リスク低減が図れます。
J-REIT銘柄のポートフォリオを確認し、上手に分散できる銘柄を組み合わせましょう。
以上、参考になれば幸いです。
J-REITの将来性について記事を書いています。
【J-REITの将来性】今後の見通しを考える
数千もの株の中から優良株を見つけ出すのは難しいですよね。
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