インフラファンドは太陽光発電所の発電により利益を上げています。
固定価格買取制度(FIT)により発電する電気は高値で買ってもらえることになっています。
でも、唯一買ってもらえないのが、電気の需要が無い時です。
電気はほとんど貯めて置くことができませんので、発電した電気はそのまま消費する必要があります。
ですので、電気の消費量が少ない日は、発電する電気の量を減らさなければなりません。
九州電力管内では、太陽光発電所が急増し、発電した電気を消費しきれない日が発生しています。
2018年10月に初めて太陽光発電所の出力制御(発電の停止)を実施し、2019年度、2020年度の実施日数は60日を超えました。
このまま、太陽光発電所の出力制御は増えていくのでしょうか。
九州に多くの太陽光発電所を保有しているインフラファンドの利益は下がってしまうのでしょうか。
九州電力管内の出力制御の状況とインフラファンドに与える影響を調べてみました。
- 九州は太陽光発電が多い
- 春と秋に出力制御される可能性が高い
- インフラファンドの減収は今のところ軽微
全国の太陽光発電の接続量
全国9電力会社の太陽光発電の接続量について調べて見ました。
電力会社 | 太陽光発電 接続量(万kW) | 備考 |
---|---|---|
北海道電力 | 199 | 2021年2月末時点 |
東北電力 | 620 | 2020年9月末時点 |
東京電力 | 1,627 | 2021年3月末時点 |
中部電力 | 957 | 2021年3月末時点 |
北陸電力 | 110 | 2021年3月末時点 |
関西電力 | 614 | 2021年3月末時点 |
中国電力 | 561 | 2021年2月末時点 |
四国電力 | 293 | 2021年3月末時点 |
九州電力 | 1,029 | 2021年3月末時点 |
(各電力会社ホームページより引用)
九州電力は東京電力に次いで2番目に太陽光発電の接続量が多い地域になっています。
なぜ、こんなに太陽光発電が多いのでしょうか。
これは、九州が全国的に日射量が多く、効率よく太陽光発電ができる地域であること。
そして、広大な場所を必要とする太陽光発電に適した土地が九州には多く存在しているからではないかと思います。
九州での太陽光発電の接続量の推移
つぎに九州電力の太陽光発電の接続量の推移を見てみます。
2012年度から始まった固定価格買取制度(FIT)により、2013年から急激に接続量が伸びています。
2020年度は1,029万kWとなっており、2009年度に比べ20倍以上に増えました。
固定価格買取制度(FIT)は発電した電気を高値で買い取ってくれる制度ですが、それは、電気の需要があればの話です。
電気は一部を除いて蓄えることが出来ませんので、太陽光の発電量が九州での電力需要を上回る場合は、発電を制限せざるを得ません。
でも、電力需要は季節により変化しますよね。
太陽光発電の出力制御の季節性
九州電力管内における太陽光の発電量が多い12時の電力需要の変化をグラフにしてみました。
グラフを見ると九州電力管内の電力需要が太陽光発電の接続量(1,029万kW)を下回る時期は
・3月~5月
・10月~11月
となります。
これは、夏は冷房、冬は暖房で電力需要が増えますが、冷暖房があまり必要でない春と秋は電力需要が少なくなるからです。
電力需要の少ない春と秋に、天候に恵まれ太陽光発電がフル稼働すると、発電を制限される可能性が高くなります。
電力会社は電力需要に対し太陽光発電の比率が高くなると、その出力を制御して、発電量を調整します。
これを太陽光発電の「出力制御」と呼んでいます。
では、現在までにどのくらい出力制御が実施されたのでしょうか。
九州電力では2018年10月から出力制御を実施しています。
出力制御の実施日数の推移は次の通りです。
やはり、3月~5月と10月、11月に出力制御の実施日数が多くなっていますね。
なお、1月と2月にも出力制御が実施されています。
これは、九州が比較的暖かい地方であるため、冬の暖房の頻度は高く無く、暖かい日も多いためだと思われます。
冬に暖かい日は、天候が晴れである可能性が高く
・冬に暖かい日→電力需要が少ない
・天候が晴れ→太陽光発電がフル稼働
の2つの要因が重なりやすいため、電力需要に対する太陽光発電量の割合が高くなり、出力制御が実施されたと考えられます。
インフラファンドにおける九州での出力制御の影響
九州ではこのまま太陽光発電が増え、出力制御される日数も増えていくのでしょうか。
毎日のように出力制御されてしまうと、太陽光発電で収入を得ているインフラファンドの利益はどんどん減ってしまいます。
これでは困ってしまいますね。
九州電力では出力制御ルールが2種類が存在します。
旧ルール | 出力制御は年間30日まで無制限・無保証 | 2015年1月15日以前 |
指定ルール | 出力制御は無制限無保証 | 2015年1月16日以降 |
旧ルールが適用されている太陽光発電所であれば、出力制御が年間30日で歯止めが掛かります。
インフラファンドの保有する太陽光発電所の出力制御ルールはどうなっているのでしょうか。
九州での発電比率が高い2つの銘柄を確認してみます。
カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人
九州の発電所 | 出力制御ルール |
---|---|
CS 志布志市発電所 | 旧ルール |
CS 伊佐市発電所 | 旧ルール |
CS 伊佐市第二発電所 | 旧ルール |
CS 湧水町発電所 | 旧ルール |
CS 伊佐市第三発電所 | 旧ルール |
CS 日出町発電所 | 旧ルール |
CS 芦北町発電所 | 旧ルール |
CS 南島原市発電所(東)(西) | 旧ルール |
CS 益城町発電所 | 旧ルール |
CS 郡山市発電所 | 旧ルール |
CS日出町第二発電所 | 旧ルール |
東京インフラ・エネルギー投資法人
九州の発電所 | 出力制御ルール |
---|---|
TI 霧島太陽光発電所 | 旧ルール |
全て旧ルールとなっています。
指定ルール(出力制御日数が無制限)では無いため一安心ですが、旧ルール(年間30日)の場合、どのくらいの影響が出るのでしょうか。
超概算で考えれば
30日(出力制御)/365日×九州での発電割合
で計算できると思います。
この式で計算すると年間の影響度合いは
カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人:約5.3%の影響(利益減)
東京インフラ・エネルギー投資法人:約3.1%の影響(利益減)
となり現状では軽微です。
なお、東京インフラエネルギー投資法人は「企業財産包括保険(出力制御補償特約)」に入っており、出力制御による損失を保険で対応するようです。(有価証券報告書より)
まとめ
九州は太陽光発電の適地であり、発電所の数も増え続けています。
このため、九州電力は電力需要の少ない日に太陽光発電の出力制御を行い発電量を調整しています。
出力制御は電力需要の少ない春と秋に多く実施されており、その頻度は今度増えることが予想されます。
インフラファンドの保有する太陽光発電の出力制御は現状全て旧ルール(年間30日まで)となっており影響は軽微です。
しかし、旧ルールが適用される太陽光発電所の受付は2015年1月15日で終了しており、新規に接続される発電所は全て、日数無制限で出力制御が行われる指定ルールとなります。
こうなると利益が減りますので、今後は九州以外の地域に太陽光発電所を増やす方が良いと思います。
以上、参考になれば幸いです。
インフラファンドのリスクについてはこんな記事も書いています。
【インフラファンド】インフラ投資法人の3つのリスクと対策を比較