インフラファンドの分配金には利益超過分配金が多く含まれています。
利益超過分配金は太陽光発電設備の減価償却費を原資とした分配金です。
資本の払い戻しという扱いになりますが、太陽光発電設備などの資産を減らして支出しているわけではありません。
ですので、利益超過分配金を出してもインフラファンドの収益力に変化はありません。
ですが、資本の払い戻しを行うことにより、投資口の取得単価が下がります。
資本の払い戻し分の取得単価が下がるのであれば、損得0でしょうか?
実は取得時の投資口価格(取得単価)により損得が変わります。
インフラファンドは太陽光発電設備取得時の単価をもと資本の払い戻しを行いますが、投資主が購入した時の取得単価が違うため、損得が生じます。
この損得のことをみなし譲渡損益と呼びます。
結局、利益超過分配金は得なのか?
2017年からインフラファンドに投資している筆者が利益超過分配金について解説します。
- 利益超過分配金は減価償却費が原資
- 減価償却しても収益力は変わらない
- 内訳は資本の払い戻しとみなし譲渡損益
- 投資口の購入額により損得が変化する
- 市場価格が右肩上がりなら得をする
減価償却費による利益超過分配金とは
インフラファンドは太陽光発電所を資産として保有しています。
資産としては太陽光発電設備と土地に分けることができます。
このうち、太陽光発電設備は減価償却の対象となり、企業の会計上、毎年一定額の減価償却費を計上する必要があります。
でも、減価償却費は会計上の費用ですが、実際の支払いを生じません。
このため資産としての現金を生み出します。
この現金の一部を分配金として配分したものを利益超過分配金と言います。
どういうことなのでしょうか。
貸借対照表と損益計算書で考える
イメージはこんな感じです。
投資主5人が200万円づつ出資して資本金を1000万円にするとします。
さらに1000万円を銀行などから借り入れます。
合計2000万円で発電設備を購入します。
すると貸借対照表は
となります。
- 借入金は毎年100万円づつ10年で返済
(利息は考えません。) - 発電設備は200万円づつ10年で減価償却
とします。
1年目に生じた収入と支出を
- 発電収入600万円
- 発電経費200万円
とすると、損益計算書は次の通りとなります。
発電収入から発電経費、減価償却を差し引き、200万円の利益が出ました。
貸借対照表は、次の通りとなります。
発電設備は200万円減価償却したので
2000万円-200万円=1800万円
借入金は100万円返済したので
1000万円-100万円=900万円
となります。
減価償却費は発電設備の資産価値を減らす役割となりますので、現金の支払いは発生しません。
よって、現金は300万円残ります。
発電収入600万円-発電経費200万円-借入金の返済100万円=300万円
そうすると、資産と負債の差額として、余剰金が200万円発生します。
現金300万を全て分配金として投資家に配分すると
(内訳)
利益分配金:200万円
利益超過分配金:100万円
となります。
利益は200万円ですが、減価償却により現金が+100万円となり、これを投資家に分配します。
これが利益超過分配金です。
最終的に貸借対照表は次の通りとなります。
現金300万円を分配金として支払いましたが、余剰金は200万円しかなかったので、資本金が100万円減りました。
これが、利益超過分配金は資本の払い戻しと呼ばれる理由です。
減価償却が終わるとどうなるか
では、減価償却が終わるとどうなるのでしょうか。
1年目と同じように
- 発電収入600万円
- 発電経費200万円
が続くとして、発生した現金は全て投資家に配分するとします。
すると、10年目は次の通りとなります。
発電設備の資産価値は0となりました。
借入金も0となり返済が完了しています。
現金300万円を投資家に分配すると最終的に貸借対照表は次の通りとなります。
きれいに0が並びました。
発電設備の資産価値は0となりましたが、設備自体が無くなったわけではありません。
ですので、次の年も発電収入が発生します。
11年目は次の通りとなります。
減価償却費が発生しないので、利益が400万円になりました。
借入金の返済も無いため、利益がそのまま現金として残ります。
現金を全て投資家に分配すると
(内訳)
利益分配金:400万円
利益超過分配金:0万円
となります。
分配金は全て利益分配金となり、金額も増えています。
金額が増えたのは借入金の返済が完了したからですね。
このシミュレーションは、あくまでも、発電収入と発電費用が変わらないという前提でした。
でも、太陽光発電設備は耐用年数を超えても、発電能力や保守経費は直ぐには変化しません。
減価償却費を終えても、十分に利益は見込めるのではないでしょうか。
利益超過分配金と取得単価の変化
つぎに実際のインフラファンドからの分配金について検証してみます。
カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(9284)の第7期の分配金は1口あたり3,700円でした。
分配金の内訳は、
- 利益分配金:3,099円
- 利益超過分配金:601円
です。
利益超過分配金については
- 全額が資本の払い戻し
- 純資産減少割合は0.004
となっています。
資本の払い戻しとみなし譲渡損益
仮にカナディアンソーラーの投資口を100,000円で購入していたとします。
100,000円×0.004=400円
の資本の払い戻しを受けたことになります。
でも、実際に資本の払い戻し分としてもらう利益超過分配金は601円です。
400円分の資本を売って601円の利益超過分配金を得たと考えます。
601円-400円=201円
201円の利益です。これを「みなし譲渡益」と呼んでいます。
図にするとこのような形になります。
まとめると
利益分配金:3,099円
利益超過分配金:601円
(資本の払い戻し:400円、みなし譲渡益:201円)
取得価格が400円減りましたが、利益超過分配金として601円もらえます。
201円得をしたことになりますね。
つぎにカナディアン・ソーラーの投資口を200,000円で購入していたとします。
すると「資本の払い戻し」と「みなし譲渡損益」は次の通りとなります。
利益分配金:3,099円
利益超過分配金:601円
(資本の払い戻し:800円、みなし譲渡損:199円)
取得価格が800円減り、利益超過分配金として601円もらうことになります。
よって、199円損となりました。
このように投資口の購入価格により、「資本の払い戻し」と「みなし譲渡損益」が変化します。
みなし譲渡益の場合は税金がかかる場合がありますので注意が必要です。
実際に取得単価の変化を確認
「資本の払い戻し」があると投資口の取得価格(=取得単価)が変化します。
私の保有するカナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(9284)の投資口で確認してみました。
私の投資口の取得単価は
- 2021年2月19日は96,138円
- 2021年4月30日に95,754円
になっていました。
私のカナディアン・ソーラー・インフラファンドの取得単価変化
取得単価は384円減少しました。
96,138円-95,754円=384円
当初の取得単価96,138円に対して減少割合は0.004となっていますので、純資産減少割合(0.004)の通りです。
私は、投資口1口あたり、384円の資本を売って、601円(利益超過分配金)を得たことになります。
217円の得(みなし譲渡益)をしたということですね。
利益超過分配金は得なのか?
利益超過分配金により、資本の払い戻しが行われ、購入した投資口の取得単価が下がることを説明してきました。
取得単価が下がったとしても、
- 投資口1口の権利は変わりません。
- インフラファンドの収益も変わらない
- 売却するときは市場価格
と考えると、市場価格が下がらなければ、利益超過分配金は、通常の利益分配金と同じと考えて良いと思います。
カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(9284)の市場価格の推移を見てみます。
(出典:TradingView提供のチャート)
利益超過分配金を出しつつも市場価格が上がっていますね。
このような銘柄であれば、利益超過分配金で分配金が増え、得をしたと考えて良いのではないでしょうか。
利益超過分配金とは
インフラファンドにおける利益超過分配金について解説しました。
- 減価償却費による分配金
- 減価償却後も発電は継続する
- 内訳は資本の払い戻しとみなし譲渡損益
- 購入額によりみなし譲渡損益が変化
- 市場価格が、右肩上がりなら得をする
インフラファンドは、利益超過分配金の比率が高い投資信託です。
保有資産である太陽光発電所の価値が変わらなければ、通常の分配金と大きな違いは無いと考えています。
しかしながら、購入額により損得が変わりますので注意が必要です。
以上、参考になれば幸いです。
インフラファンドの詳細についてはこちらを参照。
【インフラファンドとは】投資対象や仕組みをわかりやすく解説