高配株を選ぶ場合、自己資本比率が高い銘柄を選ぶと良いという情報を良く見ます。
50%以上の自己資本比率があれば、財務良好で安全性が高い企業と言われたりします。
確かに借金が少なく、自己資本で事業を行っている企業は安心ですが、全ての業種がそうであるとはかぎりません。
自己資本比率が低くても良い業種とは。
例えば、銀行業。
銀行の自己資本比率は、ほとんどが10%以下です。
なぜでしょう?
銀行は、預金を集めて企業に貸出し、貸出利息を得る事業。
預金は会計上の負債(借金)となるため、多くの預金を集めると自己資本比率が低下します。
だから、銀行は自己資本比率が低くなります。
でも、銀行業は、
- 割安で高利回りの銘柄が多い
- 安定したストック型ビジネス
- 一般企業に比べ倒産しにくい
など、高配当株の条件が揃っています。
自己資本比率を条件すると、銀行業から優良な高配当株を見つけることができません。
でも、高配当株ポートフォリオには必須の業種です。
高配当株の投資歴8年の筆者が銀行業で優良な高配当株を実際に選んでみましたので紹介します。
- スクリーニングで対象を絞る
- 利益や配当が増えている
- 事業内容が将来有望か
高配当株をスクリーニング
銀行業の上場企業は80社以上あります。
一社毎に企業情報を調べていくのは大変ですよね。
ですので、最初にスクリーニング(条件検索)を行い、分析対象の銘柄を絞ります。
スクリーニングの条件
スクリーニングを行う為には、条件を決める必要があります。
高配当株を探しますので、配当利回りが高く無くてはなりません。
また、銀行業は信用力が大切ですので、規模が大きめの企業を選ぶと良いでしょう。
- 配当利回り3%以上
- 時価総額2000億以上
で銘柄を絞ります。
スクリーニングサイトの設定
ネット上で公開されているスクリーニングサイトはバフェット・コードが使いやすく、おすすめ。
本記事では、バフェット・コードを使いスクリーニングを行います。
バフェット・コードでスクリーニングを行うには、の左上にある条件検索をクリックして、
- 配当利回り(会予)3%以上
- 時価総額2000億以上
- 銀行業
を設定し、検索ボタンを押します。
スクリーニング結果
コード | 銀行名 | 配当利回り (会社予想) | 時価総額 (百万円) |
---|---|---|---|
7167 | めぶきFG | 4.20% | 279,656 |
7182 | ゆうちょ銀行 | 5.10% | 3,696,306 |
7186 | コンコルディアFG | 4.10% | 560,409 |
8304 | あおぞら銀行 | 5.80% | 309,330 |
8306 | 三菱UFJ・FG | 4.30% | 9,337,400 |
8308 | りそなHD | 4.10% | 1,215,596 |
8309 | 三井住友トラストHD | 4.90% | 1,539,501 |
8316 | 三井住友FG | 5.50% | 5,505,212 |
8331 | 千葉銀行 | 3.50% | 549,911 |
8354 | ふくおかFG | 4.20% | 469,908 |
8355 | 静岡銀行 | 3.30% | 456,395 |
8359 | 八十二銀行 | 4.30% | 229,649 |
8410 | セブン銀行 | 4.40% | 293,831 |
8411 | みずほFG | 5.30% | 3,824,697 |
2022年6月15日時点のスクリーニング結果は、次の14銘柄となりました。
3メガバンクや地方銀行など多彩な顔ぶれですね。
財務状況を確認する
スクリーニングにより、銘柄が絞れたら、財務状況を確認していきます。
- 利益が長期で上昇しているか
- 配当は増えているか
- 配当性向が低いか(50%以下)
財務状況は、バフェット・コードの企業概要から確認することができます。
企業概要は、バフェット・コードのトップページで企業名又は証券コードを入力して検索すると表示されます。
なお、スクリーニングした結果に表示された企業名をクリックして表示させることも可能です。
バフェット・コードの企業概要から、利益と配当の推移と配当性向を確認してみます。
めぶきFG
めぶきフィナンシャルグループの利益と配当の推移です。
利益も配当も2018年3月から横ばい。
配当性向は27.6%です。
ゆうちょ銀行
ゆうちょ銀行の利益と配当の推移です。
利益は変動していますが、ほぼ横ばいです。
配当も2017年度以降は一定で、配当性向は52.8%と高くなっています。
コンコルディアFG
コンコルディア・フィナンシャルグループの利益と配当の推移です。
利益は減少していますが、配当は減配の無い累進配当です。
無理して配当を出しているかもしれませんね。
配当性向は40.1%と少し高めです。
あおぞら銀行
あおぞら銀行の利益と配当の推移です。
利益は減少傾向であり、配当は利益に応じて増減しています。
配当性向は49.7%と少し高めで、利益に応じて配当金を決めているようです。
三菱UFJ・FG
三菱UFJフィナンシャル・グループの利益と配当の推移です。
利益は変動していますが上昇傾向、配当は減配無しの累進配当。
配当性向は31.2%です。
りそなHD(8308)
りそなホールディングスの利益と配当の推移です。
利益は減少傾向、配当は2019年3月から横ばい。
配当性向は45.5%で、少し高めです。
三井住友トラストHD
三井住友トラストホールディングスの利益と配当の推移です。
利益は上昇傾向、配当も減配無しの累進配当。
配当性向は37.7%です。
三井住友FG
三井住友フィナンシャルグループの利益と配当の推移です。
利益は横ばいが続いていますが、配当は減配無しの累進配当を維持しています。
配当性向は40.7%で、少し高めです。
千葉銀行
千葉銀行の利益と配当の推移です。
利益は上昇傾向、配当は減配無しの累進配当。
配当性向は32.5%です。
ふくおかFG
ふくおかフィナンシャグループの利益と配当の推移です。
利益が赤字になった時期がありますが、配当は減配無しの累進配当となっています。
配当性向は33.4%ですが、利益が増えていないので、今後は高くなると思います。
静岡銀行
静岡銀行の利益と配当の推移です。
利益は変動しながらも横ばい、配当は減配無しの累進配当となっています。
配当性向は33.4%、利益が横ばいですので、将来は高くなると思われます。
八十二銀行
八十二銀行の利益と配当の推移です。
利益は減少傾向で、配当も減配時期があります。
配当性向は29.4%です。
セブン銀行
セブン銀行の利益と配当の推移です。
利益は直近で減少、配当は横ばい。
配当性向は62.1%となっており、余力は少ない状況です。
みずほFG
みずほフィナンシャルグループの利益と配当の推移です。
利益は減少傾向、配当は横ばいです。
配当性向は38.2%ですが、高くなっていくと思われます。
財務状況を確認した結果
コード | 銀行名 | 利益が 右肩上がり | 配当が 増えている | 配当性向 |
---|---|---|---|---|
7167 | めぶきFG | △ | △ | 27.6% |
7182 | ゆうちょ銀行 | △ | △ | 52.8% |
7186 | コンコルディアFG | × | ○ | 40.1% |
8304 | あおぞら銀行 | × | × | 49.7% |
8306 | 三菱UFJ・FG | ○ | ○ | 31.2% |
8308 | りそなHD | × | △ | 45.5% |
8309 | 三井住友トラストHD | ○ | ○ | 37.7% |
8316 | 三井住友FG | △ | ○ | 40.7% |
8331 | 千葉銀行 | ○ | ○ | 32.5% |
8354 | ふくおかFG | × | ○ | 33.4% |
8355 | 静岡銀行 | △ | ○ | 35.2% |
8359 | 八十二銀行 | × | × | 29.4% |
8410 | セブン銀行 | × | △ | 62.1% |
8411 | みずほFG | × | △ | 38.2% |
- 利益が上昇傾向(横ばい含む)
- 配当は増えている
- 配当性向が低い(50%以下)
を基準に調べてみました。
2022年6月時点で、条件を満たすのは
- 三菱UFJフィナンシャルグループ
- 三井住友トラストホールディングス
- 三井住友フィナンシャルグループ
- 千葉銀行
- 静岡銀行
の5行となります。
将来性を確認する
高配当で財務状況が良い銀行を選んだら、最後に事業内容を確認します。
でも、銀行業の事業に大きな違いはありません。
将来の成長余力や増配の可能性を考え
- 銀行業以外の金融事業を行っているか。
- 海外も含め大きな市場で事業を行っているか。
- 株主還元、配当政策に増配余力はあるか。
を確認していきます。
三菱UFJ・FG
3メガバンクの1角、日本を代表する金融業が集まったグループです。
銀行業、信託銀行業、証券業務を中心にクレジットカード、貸金業務、リース業務、資産運用業務などを行っています。
- 金融、不動産及び証券代行
- 海外の商業銀行への出資
- 投資家、資産運用会社等へのサービス
- 為替・資金・証券サービス
国内外の個人から大企業までを対象に事業を展開。
2023年度までに配当性向40%へ累進的な引き上げをめざしています。
現在の配当性向が31.4%ですので、まだ、余裕があります。
三井住友トラストHD
国内唯一の専業信託銀行グループです。
主に個人や企業が持つ財産を管理、運用する事業を行っています。
- 個人トータルソリューション事業
- 法人事業
- 証券代行事業
- 不動産事業
- 受託事業
- マーケット事業
欧州、米州、アジア、オセアニアにも事業展開。
2022年度を目途に配当性向40%程度への引き上げをめざしています。
現在の配当性向が37.7%ですので、少し余力を残しています。
三井住友FG
3メガバンクの1角、幅広い事業を展開する複合金融グループです。
銀行業を中心に、リース、証券、コンシューマーファイナンス、システム開発・情報処理などの事業を行っています。
- リテール(個人や中小企業)
- ホールセール(大企業等)
- グローバル
- 市場(為替,デリバティブ,債券,株式等)
海外40か国・地域、148拠点を展開し、海外ビジネスからの収益は全体の約2割を占めます。
2022年度まで減配せずに配当性向40%を目指す。
現在の配当性向は40.7%ですので、今後は利益に応じた配当になりそうです。
千葉銀行
千葉県を主要な営業基盤とする地方銀行です。
地方銀行トップクラスの資産規模および収益力を有しています。
- 証券、資産運用
- 調査、コンサルティング
- リース、ベンチャーキャピタル
- クレジットカード
- 業務受託、職業紹介
- 信用補償、債権管理
- 地域商社
ニューヨーク、ロンドン、香港など、海外に3支店、6拠点を展開。
配当に関する明確な指針は公表されておりませんが、株主優待を実施しています。
静岡銀行
静岡県を主な営業基盤とする地方銀行です。
県内に3銀行(静岡銀行、スルガ銀行、清水銀行)を有する3大地銀の1つ
- 銀行業
預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、為替業務など - リース業
ファイナンス・リースなど
ニューヨーク、香港、シンガポールに支店を有し、グループ企業として欧州静岡銀行があります。
中長期的に連結ベースでの株主還元率50%以上にする目標を掲げています。
銀行業の高配当株を選ぶ
- 利回り3%、時価総額2000億で対象を絞る
- 利益や配当が増えており配当性向50%以下
- 事業範囲の大きさ、増配余力
銀行業の高配当株を探してみました。
2022年6月17日時点では、
- 三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)
が優良な高配当株に見えます。
今後の成長性を考えると、事業範囲に成約の少ないメガバンクは有利ですね。
日本は低金利政策が続いていますが、金利が上昇すると銀行の収益は増えていきます。
銀行業は配当利回りも高いので、高配当株ポートフォリオには必須の業種だと思います。
以上、参考になれば幸いです。
卸売業の高配当株についてはこちらで解説しています。
【高配当株の探し方】卸売業のセクター(業種)で銘柄を選ぶ
多くの株の中から優良株を見つけ出すのは難しいですよね。
簡単に比較分析ができたら良いと思いませんか。
EXCEL分析シートのダウンロードして、銘柄の抽出からチェック方法までを解説した本があります。