金融業とは、お金を集めたり、貸したりする事業をいいます。
東京証券取引所の業種区分の中では
- 銀行業
- 証券業
- 保険業
が金融業にあたります。

他に金融業はないのでしょうか。
金融業は他に、クレジットや信販、リース業などがあります。
東京証券取引所の業種区分では、これらをまとめてその他金融業として分類しています。
その他金融業は
- 個人から企業まで幅広い顧客
- ストック型の事業で安定収益
- 右肩上がりで増配している銘柄が多い
など、特定の商品やサービスに依存せず、広範囲でリスク分散効果が高い業種と言えます。
一方、お金を集めることが会計上の負債となるため、自己資本比率が低くなります。
一般的に自己資本比率が高い企業が財務安定銘柄と言われますが、金融業には当てはまりません。
高配当株の選定時に、自己資本比率を見て金融業を外さないように注意して下さいね。
今回は、どの銘柄がその他金融業で優良な高配当株になるのか、実際に選んでみましたので紹介します。
- スクリーニングサイトで対象を絞る
- 利益や配当が増えている
- 事業内容が将来有望
高配当株をスクリーニング
その他金融業の上場企業は30社以上あります。
1つ1つの企業情報を見て行くと時間がかかりますので、まず、スクリーニングを行い、分析対象を絞り込みます。
スクリーニングの条件
最初にスクリーニングの条件を決めます。
高配当株ですので、まずは利回りが高くなくてはなりません。
また、長期の安定性や情報の信頼性を考えると一定規模の企業を選ぶと良いと思います。
- 配当利回り3%以上
- 時価総額1000億以上
として銘柄を絞ります。
スクリーニングサイトの設定
株のスクリーニングサイトは色々ありますが、私はバフェット・コードを良く使います。
ネット上に無料で公開されており、グラフが多彩で、情報の推移がわかりやすいのが特徴です。
バフェット・コードを使いスクリーニングを行ってみましょう。
バフェット・コードの左上にある条件検索をクリックして、
- 配当利回り(会予)3%以上
- 時価総額1000億以上
- その他金融業
を設定し、検索ボタンを押します。

スクリーニング結果
2022年7月15日に実施したスクリーニングの結果は、次の12銘柄です。
コード | 会社名 | 配当利回り (会社予想) | 時価総額 (百万円) |
---|---|---|---|
7164 | 全国保証 | 3.4% | 297,878 |
8253 | クレディセゾン | 3.8% | 245,540 |
8424 | 芙蓉総合リース | 4.0% | 236,114 |
8425 | みずほリース | 4.1% | 153,355 |
8439 | 東京センチュリー | 3.2% | 542,574 |
8566 | リコーリース | 3.8% | 109,428 |
8570 | イオンフィナンシャルサービス | 3.8% | 282,749 |
8572 | アコム | 3.1% | 499,749 |
8584 | ジャックス | 5.0% | 118,322 |
8585 | オリエントコーポレーション | 3.1% | 217,988 |
8591 | オリックス | 3.9% | 2,656,096 |
8593 | 三菱HCキャピタル | 5.0% | 888,749 |
リース会社や信販会社が多いですね。
財務状況を確認する
スクリーニングで銘柄が絞れたら、財務状況を確認します。
- 利益が長期で上昇しているか
- 配当は増えているか
- 配当性向が低いか(50%以下)
を過去の推移を見て確認します。
バフェット・コードの企業概要で財務状況の推移を見ていきましょう。
バフェット・コードで企業概要を表示させるには、トップページに検索窓に企業名又は証券コードを入力します。

また、スクリーニングした結果に表示された企業名をクリックして表示させることも可能です。
バフェット・コードの企業概要から、利益と配当の推移と配当性向を確認します。
全国保証
住宅ローンの信用保証を行う全国保証(株)の利益と配当の推移です。
利益も配当も右肩上がりで、長期に渡り増えています。理想的な推移ですね。
配当性向は32.8%で、無理に配当を出している様子はありません。
クレディセゾン
クレジットカードで有名な(株)クレディセゾンの利益と配当の推移です。
利益は変動が大きく、安定していません。
配当は減配の無い累進配当を続けていますが、増配のタイミングは少なめです。
配当性向は24.3%で、適正な範囲だと思います。
芙蓉総合リース
大手総合リース会社の1角、芙蓉総合リース(株)の利益と配当の推移です。
利益も配当も右肩上がりで上昇を続けています。
配当性向は25.2%で、理想的な財務状況だと思います。
みずほリース
総合リース会社のみずほリース(株)の利益と配当の推移です。
利益は上昇を続けていましたが、直近で減少しました。
配当は連続増配を続けています。
配当性向は35.7%、高い状況ではありません。
東京センチュリー
伊藤忠系列の総合リース会社の東京センチュリー(株)の利益と配当の推移です。
利益は上昇を続けてきましたが、直近は横ばいで推移しています。
配当は連続増配を続けていますが、徐々に伸び率が減ってきました。
配当性向は34.7%ですので、高い状況ではありません。
リコーリース
事務機で有名なリコーのグループ会社のリコーリース(株)の利益と配当の推移です。
利益は少しづつですが上昇傾向、配当は連続増配を続けています。
配当性向は27.4%で、適正な範囲だと思います。
イオンフィナンシャルサービス
イオン系の金融サービス会社、イオンフィナンシャルサービス(株)の利益と配当の推移です。
利益は減少傾向、配当は直近で減配しました。
配当性向は35.7%で高くはありませんが、状況は厳しいのかもしれません。
アコム
三菱UFJグループの消費者金融会社であるアコム(株)の利益と配当の推移です。
利益は2017年3月期に赤字を出しました。全体として変動しながらも横ばいの状況。
配当は、しばらく無配でしたが、2018年3月期より連続増配を続けています。
配当性向は19.7%と低いですね。
ジャックス
三菱UFJグループの信販会社、(株)ジャックスの利益と配当の推移です。
利益はしばらく停滞していましたが、上昇傾向に変わってきました。
配当は減配の無い累進配当を続けています。
配当性向は30.3%で、問題はありません。
オリエントコーポレーション
オリコカードやオリコローンで有名な(株)オリエントコーポレーションの利益と配当の推移です。
利益は減少傾向のようです。
配当は2016年3月期まで無配でしたが、その後は累進配当を続けています。
配当性向は26.4%、適正な範囲ですね。
オリックス
リースだけではなく、不動産や事業投資なども行う、オリックス(株)の利益と配当の推移です。
利益は近年、停滞しています。
配当は減配の無い累進配当を続けてきましたが、伸び率は小さくなってきました。
配当性向は32.8%です。
三菱HCキャピタル
三菱UFJグループのリース会社、三菱HCキャピタル(株)の利益と配当の推移です。
利益は変動しながらも上昇傾向、配当は連続増配を続けています。
配当性向は40.4%と少し高めですね。
財務状況を確認した結果
コード | 会社名 | 利益の長期増 | 配当の増加 | 配当性向 |
---|---|---|---|---|
7164 | 全国保証 | ○ | ○ | 32.8% |
8253 | クレディセゾン | △ | ○ | 24.3% |
8424 | 芙蓉総合リース | ○ | ○ | 25.2% |
8425 | みずほリース | △ | ○ | 35.7% |
8439 | 東京センチュリー | △ | ○ | 34.7% |
8566 | リコーリース | ○ | ○ | 27.4% |
8570 | イオンフィナンシャルサービス | △ | △ | 35.7% |
8572 | アコム | △ | ○ | 19.7% |
8584 | ジャックス | ○ | ○ | 30.3% |
8585 | オリエントコーポレーション | △ | ○ | 26.4% |
8591 | オリックス | △ | ○ | 32.8% |
8593 | 三菱HCキャピタル | ○ | ○ | 40.4% |
各企業の財務状況を
- 利益が長期で上昇しているか
- 配当は増えているか
- 配当性向が低いか(50%以下)
を基準に調べてみました。
その他金融業は、利益も配当も増えている銘柄が多く、成長性が感じられます。
その中でも特に変動が少なく、長期保有に適した
- 全国保証
- 芙蓉総合リース
- リコーリース
- ジャックス
の4社を財務優良企業として選んでみました。
将来性を確認する
高配当で財務優良企業を選んだら、最後に事業内容を見ていきます。
継続的な成長や増配の可能性を考え
- 事業に成長性(広がり)があるか
- 世の中の潮流とあっているか
- 海外の成長力を取り込んでいるか
を企業のホームページや決算報告書などを見て確認します。
全国保証株式会社
特定の金融機関グループに属さない独立系で国内最大級の住宅ローン保証会社です。
メガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合など、様々な金融機関と提携して事業を行っています。
- 信用保証事業
日本の人口推移を考えると住宅ローン事業は頭打ちになる可能性があるかもしれません。
しかし、現状では、日本の低金利環境や住宅取得支援策が有利に働き利益を得ています。
事業は日本国内を対象としており、沖縄を除く全国に営業展開しています。
芙蓉総合リース株式会社
みずほ(旧富士銀)系のリース会社。情報関連や事務機器のほか不動産リースに強みを持っています。
買収でBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を拡充しました。
- リース及び割賦(情報機器、工作機械等)
- ファイナンス(金銭貸付、有価証券等)
- その他(環境、BPO及びモビリティ等)
リースは様々な企業のサポート事業であり、企業の数だけ成長性があります。
不動産、医療・福祉、エネルギー・環境を戦略分野に位置づけ、非金融分野でも事業を拡大中。
海外では、アメリカ、アジア、ヨーロッパの各地に営業拠点があり、事業を展開しています。
リコーリース株式会社
リコー系のリース会社。主に中小企業を顧客としてリース事業を展開しています。
集金代行や投資事業など強化中で、2020年3月にみずほリースと業務提携しました。
- リース&ファイナンス(事務機、機械等)
- サービス(売掛回収、ファクタリング等)
- インベストメント(太陽光、不動産等)
売上の大部分はリース事業で、ストック型ビジネスとして安定した収益が得られます。
太陽光発電、不動産事業を通したESGの取り組みも行っています。
日本国内で事業を展開する企業です。
株式会社ジャックス
三菱UFJグループの信販会社。クレジットカードやオートローンでは業界トップクラスの取扱高を誇ります。
東南アジアに進出して事業を拡大中。
- クレジット事業(オートローン、月販)
- カード・ペイメント事業(集金代行等)
- ファイナンス事業(住宅ローン、保証等)
- 海外事業(二輪車、オートローン)
個人消費者向けのストック型事業を展開しており、大手金融グループで安定した収益が見込めます。
Web機能強化やスマホアプリなどデジタル分野でのサービス開発も積極的。
2010年より、べトナム、インドネシア、フィリピン、カンボジアに進出し事業を展開中。
その他金融業の高配当株を選ぶ
- 利回り3%、時価総額1000億で対象を絞る
- 利益や配当が上昇傾向、配当性向50%以下
- 事業内容が将来有望、海外展開あり
2022年7月15日時点では、
- 芙蓉総合リース株式会社
- 株式会社ジャックス
が優良な高配当株に見えます。
芙蓉総合リースは株価が高く、購入しにくい面もありますが、株主優待も行っており、お得感があります。
ジャックスは、成長が見込まれるASEAN諸国の事業に期待ができますね。
その他金融業は、ローンやリースなどストック型ビジネスで安定した収益が見込めます。
増収増配の銘柄が多く、高配当株ポートフォリオには必要な業種だと思います。
以上、参考になれば幸いです。
情報通信業の高配当株については、こちらで解説しています。
【高配当株の探し方】情報通信業のセクター(業種)で銘柄を選ぶ
高配当株投資の魅力と始め方を丁寧に解説。
安定した大型株で増配株を見つけ、年間100万円が入ってくる仕組みを作ります。
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