新興国株式インデックスファンドは、今後、高い経済成長が見込まれる国々に投資するファンドです。
現状では、中国、台湾をメインとして、20か国以上の国や地域に投資されています。
分散投資の一つとして、また、将来の高い経済成長を期待して投資される方も多いのではないでしょうか。
インデックスファンドを選ぶ場合には、運用コスト(信託報酬)の低いものを選びましょう。
2023年2月時点で購入時手数料や信託財産保留額が無く、信託報酬が0.2%以下の新興国株式インデックスファンドは、次の2つです。
- eMAXIS Slim新興国株式インデックス
- SBI新興国株式インデックスファンド
どちらが良いのでしょうか。
どちらも運用コストの低いファンドですが投資先の国や地域の比率に少し違いがあります。
特徴的な違いは、eMAXIS Slimは韓国に投資しますが、SBIは韓国を含まないことです。
この違いは運用成績にどのような影響を与えるのでしょうか。
両方に積立投資を行っている筆者が、2つの新興国株式インデックスファンドについて紹介します。
- eMAXISは韓国有り、SBIは無し
- 人気はeMAXIS slim
- 運用コストはSBIが優秀
- 私が投資した結果はSBI
新興国株式ファンドの違い
新興国とは、先進国に対し、現在の経済水準はまだ低いが、高い成長性を秘めた国々を示します。
新興国株式インデックスファンドでは、新興国の株式市場全体に投資を行いますが、ファンドにより少し違いがあります。
- eMAXIS Slim新興国株式インデックス
- SBI新興国株式インデックスファンド
の違いを見ていきましょう。
国や地域別構成比率の違い
同じ新興国株式インデックスファンドでも、連動させる指数(インデックス)が異なると国や地域の構成比率が変わります。
「eMAXIS Slim新興国株式」と「SBI新興国株式」の連動指数は次の通りです。
新興国株式ファンド | 連動する指数 |
---|---|
eMAXIS Slim新興国株式 | MSCIエマージング・マーケット・インデックス |
SBI新興国株式 | FTSEエマージング・インデックス |
ともに新興国の中大型株を対象として、株式市場全体に投資します。
また、時価総額加重方式を採用していますので、30%以上が中国への投資となります。
2つのファンドの国や地域別構成比率は次の通りです。
(2022.9月末現在、交付目論見書より作成)
(2023.2.3のSCHEのFact Sheetより作成)
新興国株式インデックスの大きな違いは韓国を含むかどうかです。
- eMAXIS Slim(MSCI):韓国を含む
- SBI(FTSE):韓国を含まない
この違いにより、SBI新興国株式は、中国、台湾、インドの比率が高くなっています。
ファンドの仕組みの違い
「eMAXIS Slim新興国株式」と「SBI新興国株式」はファンドの仕組みも違います。
eMAXIS Slim新興国株式インデックス
「eMAXIS Slim新興国株式」はマザーファンドを通じて新興国株式に投資します。
これはファミリーファンドと呼ばれる方式です。
複数の新興国株式ファンド(ベビーファンド)の資金をマザーファンドに集めて資産額を大きくし効率良く投資を行う仕組みです。
SBI新興国株式インデックスファンド
「SBI新興国株式」はマザーファンドからETFを経由して新興国株式に投資します。
これはファンド・オブ・ファンズと言う仕組みです。
eMAXIS Slimに比べ、ETFを経由するため、手数料が増える気がしますよね。
投資対象のETF「シュワブ エマージング・マーケッツ エクイティ ETF(SCHE)」は資産規模が1兆円以上あり、低コストで運用されています。
このため、マザーファンドが直接株式を売買するより運用コストを低減できる可能性があります。
新興国株式ファンドの比較
「eMAXIS Slim新興国株式」と「SBI新興国株式」の資産規模と運用コストを比較してみます。
総資産額の比較
新興国株式ファンド | 設定日 | 純資産額 |
---|---|---|
eMAXIS Slim新興国株式 | 2017年7月31日 | 約1562億円 |
SBI新興国株式 | 2017年12月6日 | 約282億円 |
(2024年5月8日時点、楽天証券 投信スーパーサーチ調べ)
「eMAXIS Slim新興国株式」は「SBI新興国株式」の約5.4倍の純資産額となっています。
資金が多く集まっている「eMAXIS Slim新興国株式」の方が人気が高いと言えます。
運用コストの比較
インデックスファンドには主に2つの運用コストがあります。
- 委託、販売、受託会社の報酬(信託報酬)
- 株式保管や監査費用など(その他費用)
まずは、信託報酬を比較してみましょう。
信託報酬率
新興国株式ファンド | 信託報酬率 | 備考 |
---|---|---|
eMAXIS Slim新興国株式 | 0.187% | 2020年9月25日変更 |
SBI新興国株式 | 0.176% |
信託報酬率は「SBI新興国株式」の方が0.011%低くなっています。
ただし、「eMAXIS Slim新興国株式」は純資産額に応じて信託報酬率が下がる仕組みを採用しています。
純資産額 | 信託報酬率 |
---|---|
500億円未満の部分 | 0.18700% |
500億円~1,000億円の部分 | 0.18645% |
1,000億円以上の部分 | 0.18590% |
しかし、これを含めても、「SBI新興国株式」の方が若干有利ですね。
総経費率
次に信託報酬に株式保管や監査費用など(その他費用)を加えた総経費率を比較してみます。
総経費率は運用期間毎に算出され、各ファンドの運用報告書に記載されています。
新興国株式ファンド | 総経費率 | 運用期間 |
---|---|---|
eMAXIS Slim新興国株式 | 0.32% | 2018年4月26日~2019年4月25日 |
0.32% | 2019年4月26日~2020年4月27日 | |
0.30% | 2020年4月28日~2021年4月26日 | |
0.30% | 2021年4月27日~2022年4月25日 | |
0.31% | 2022年4月26日~2023年4月25日 |
新興国株式ファンド | 総経費率 | 運用期間 |
---|---|---|
SBI新興国株式 | 0.10% | 2019年11月13日~2020年11月12日 |
0.19% | 2019年11月13日~2020年11月12日 | |
0.19% | 2020年11月13日~2021年11月12日 | |
0.20% | 2021年11月13日~2022年11月12日 |
直近の運用報告書を見ると「SBI新興国株式」の総経費率が0.1%低くなっています。
「eMAXIS Slim新興国株式」は、2020年9月25日に信託報酬を0.2079%から0.187%に変更しましたが、経費率の差は縮まりませんね。
新興国株式ファンドの成績
「eMAXIS Slim新興国株式」と「SBI新興国株式」の違いや運用コストを比較しました。
運用成績はどの程度違うのでしょうか。
実際に積立投資を行い比較してみました。
- 積立開始:2021年4月20日
- 積立金額:毎月20日毎に1,000円
3か月後の運用成績
約3か月後、2021年7月31日時点での運用成績は次の通りです。
投資金額は4,000円(積立4回分)、積立額に対する運用利回りは
- eMAXIS Slim:-2.34%
- SBI新興国株式:-2.49%
です。残念ながらどちらもマイナスでした。
これは2021年7月下旬に中国当局による教育業界などへの規制強化があり中国株が大幅安となった影響を受けたものと考えられます。
「eMAXIS Slim新興国株式」の方がマイナス幅が小さいのは、「SBI新興国株式」に比べ中国比率が少ないからと思われます。
6か月後の運用成績
6か月後の2021年10月30日時点での運用成績は次の通りです。
投資金額は7,000円(積立7回分)、積立額に対する運用利回りは
- eMAXIS Slim:+1.86%
- SBI新興国株式:+2.94%
となります。
「SBI新興国株式インデックスファンド」の利回りが約1.1%高い結果となりました。
この3か月、韓国の株価指数が低下傾向ですので、韓国を含む「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」はこの影響を受けたのかもしれません。
9か月後の運用成績
9か月後の2022年1月31日時点での運用成績は次の通りです。
投資金額は10,000円(積立10回分)、積立額に対する運用利回りは
- eMAXIS Slim:ー2.91%
- SBI新興国株式:-1.33%
となります。
「SBI新興国株式インデックスファンド」の利回りが約1.6%高い結果となりました。
世界的な株価調整局面に入り、運用利回りはマイナスになりましたが、韓国を含まないSBIの方が利益が高いようです。
1年後の運用成績
1年後の2022年4月30日時点での運用成績は次の通りです。
投資金額は13,000円(積立13回分)、積立額に対する運用利回りは
- eMAXIS Slim:ー4.08%
- SBI新興国株式:-1.68%
となります。
「SBI新興国株式インデックスファンド」の利回りが約2.4%高い結果となりました。
世界情勢の大きな変化もあり、運用利回りはマイナスになりましたが、SBIの方が利益が多く、eMAXIS Slimとの差も開きました。
1年3か月後の運用成績
1年3か月後の2022年7月31日時点での運用成績は次の通りです。
投資金額は16,000円(積立16回分)、積立額に対する運用利回りは
- eMAXIS Slim:ー2.59%
- SBI新興国株式:+0.40%
となります。
「SBI新興国株式インデックスファンド」の利回りが約3.0%高い結果となりました。
SBIはプラスに反転し、eMAXIS Slimとの差も開きました。
韓国株が引き続き低調であるとともに、経費率の差も影響しているものと思います。
1年6か月後の運用成績
1年6か月後の2022年10月31日時点での運用成績は次の通りです。
投資金額は19,000円(積立19回分)、積立額に対する運用利回りは
- eMAXIS Slim:ー7.84%
- SBI新興国株式:-5.34%
となります。
「SBI新興国株式インデックスファンド」の利回りが約2.5%高い結果となりました。
eMAXIS Slimとの差は少し縮まりました。
新興国株が全体として低調で、韓国の差、インドや台湾の比率の差が影響しているかもしれません。
1年9か月後の運用成績
1年9か月後の2023年1月31日時点での運用成績は次の通りです。
投資金額は22,000円(積立22回分)、積立額に対する運用利回りは
- eMAXIS Slim:+1.17%
- SBI新興国株式:+3.12%
となります。
「SBI新興国株式インデックスファンド」の利回りが約2.0%高い結果となりました。
利回りの差はさらに縮まりました。韓国の株式が復調してきたようですね。
2年後の運用成績
2年後の2023年4月30日時点での運用成績は次の通りです。
投資金額は25,000円(積立25回分)、積立額に対する運用利回りは
- eMAXIS Slim:-2.87%
- SBI新興国株式:-1.50%
となります。
「SBI新興国株式インデックスファンド」の利回りが約1.4%高い結果となりました。
利回りの差が徐々に少なくなっています。
このまま行くとeMAXIS Slimが逆転するかもしれませんね。
SBI新興国株式の利回りが高い
- eMAXISは韓国有り、SBIは無し
- eMAXISの方が人気は高い
- 運用コストはSBIが優秀
- 2年間の運用成績はSBIが良い
「eMAXIS Slim新興国株式」と「SBI新興国株式」は、どちらも運用コストが低くおすすめのファンドです。
選ぶ場合には、韓国を含めるかどうかを検討すると良いでしょう。
韓国を含めない「SBI新興国株式」は、その分、中国、台湾、インドなどの比率が高くなります。
2年間の運用結果は「SBI新興国株式インデックスファンド」の方が良い結果となりましたが、このまま続くかはわかりません。
それぞれの投資信託の特徴を考え、検討されると良いと思います。
以上、参考になれば幸いです。
S&P500のファンドも比較しています。
【実際に比較】SBI・V・S&P500とeMAXIS slimはどっちが良いか
FIRE(経済的自立と早期リタイヤ)はアメリカ発の概念です。
アメリカで生活する場合の概念を翻訳した本が多いですが、日本人には合うのでしょうか。
この本は社会保障や税制優遇制度など、日本の制度にもとづいてFIREを考えています。