市場全体に広く分散投資するなら、指数に連動するファンドを購入する方法があります。
日本株の場合はTOPIX、米国株の場合はS&P500などは有名ですよね。
日本のREIT市場全体を表す指数は「東証REIT指数」です。
東証REIT指数に連動するファンドには
- 投資信託
- ETF
がありますが、どちらを購入したら良いのでしょうか。
ETFは投資信託を市場に上場したものですね。
以前は、ETFは投資信託より運用コスト(信託報酬)が低く有利と言われましたが、最近はほとんど変わりません。
分配金の多い投資信託がありますが、有利なのでしょうか。
株式投資歴7年の筆者が、東証REIT指数に投資する場合、投資信託とETFのどちらが良いかを解説します。
- 分配金の出る投資信託は利回りが高く見えるがリターンは変わらない
- 信託報酬の低い投資信託とETFのリターンは同じ
- 投資信託はポイント、ETFは貸株によりリターンを増せる
- 生活改善等、分配金が必要ならETF
- 長期で資産を増やすなら信託報酬の低い投資信託
東証REIT指数とは
(引用元:TradingVeiw提供のチャート)
東証REIT指数とは、東京証券取引所に上場するREIT全銘柄の時価総額を比較する指数です。
2003年3月31日の算出値を1,000として比較しています。
2008年のリーマンショック前後で大きく落ち込みましたが徐々に回復しており、直近の値は2150前後となりました。
直近の10年間で2倍以上に成長していますね。
東証REIT指数に連動する投資信託
投資信託は投資家から集めた資金を専門家が投資・運用する金融商品です。
証券会社や銀行などの販売会社から購入します。
- 少額(100円)から購入ができる
- 自動積立投資に対応している
- 分配金が再投資される場合は税金がかからない
- 取引価格は営業日毎に決まり、購入タイミングを図ることが難しい
- 分配金の方針など運用会社が独自に決めるため、商品の見極めが必要
- 販売会社への信託報酬が必要で運用コストが高め
投資信託は分配金が再投資される場合は、税金がかからず効率良く資産を増やすことができますが、J-REITの場合は分配金を出す商品も多くなっています。
東証REIT指数に連動する投資信託にはどのようなものがあるか見ていきます。
信託報酬の低い投資信託
東証REIT指数に連動すると言うことは、基本的にどの銘柄でもJーREITによる運用成績は同じです。
ですので、運用コスト(主に信託報酬)が低い方がリターンが大きくなります。
楽天証券の投信スーパーサーチで東証REIT指数に連動する投資信託を調べたところ18銘柄ありました。
そのうち、信託報酬が最も少ないものは、次の2銘柄です。
投資信託 | 信託報酬 | 純資産額 |
---|---|---|
eMAXIS Slim 国内リートインデックス | 0.187% | 約85億円 |
Smart-i Jリートインデックス | 0.187% | 約39億円 |
(2021年7月21日時点)
この2銘柄は年1回の分配金を配分する方針となっていますが、これまでに配分された実績は無く、資産の成長を優先した投資信託です。
でも、いずれも純資産額が小さく、人気の投資信託とは言えない状況ですね。
では、資産額大きな投資信託にはどのようなものがあるでしょうか。
資産額が大きい投資信託
東証REIT指数に連動する投資信託のうち、純資産額が1000億円をこえるものは次の3つです。
投資信託 | 信託報酬 | 純資産額 |
---|---|---|
ダイワJ-REITオープン(毎月分配型) | 0.792% | 約4,304億円 |
新光J-REITオープン | 0.715% | 約1,142億円 |
MHAM J-REIT インデックスファンド(毎月決算型) | 0.715% | 約1,046億円 |
(2021年7月21日時点)
この3銘柄はいづれも年12回(毎月)の分配金を出す投資信託です。
「ダイワJ-REITオープン(毎月分配型)」の交付運用報告書(2020年9月16日~2021年3月15日)を見ると
- 基準価格:3,435円
- 分配金合計:480円(半年)
となっていました。
なんと、年利28%の分配金がもらえる計算になります。
他の銘柄も確認しましたが、1番多く分配金がもらえる投資信託でした。
でも、東証REIT指数に連動していますので、J-REITによる運用成績は同じはずです。
どこから、この分配金が出ているのでしょうか。
最近5年間の東証REIT指数と基準価格の推移を見てみます。
ダイワJ-REITオープン(毎月分配型)の交付運用報告書(2020年9月16日~2021年3月15日)から引用
「ダイワJ-REITオープン(毎月分配型)」の基準価格は東証REIT指数が上昇しても増えていないことがわかります。
東証REIT指数が下がっている(J-REITが値下がり)時は、そのまま基準価格下がります。
東証REIT指数が上がっている(J-REITが値上がり)時は、基準価格を上げすに値上がり益を分配金として配分しているということです。
ですので、基準価格は徐々に下がる(資産が減る)ことになります。
各投資信託の分配金を含めた、直近1年のリターンを比較してみます。
投資信託 | 信託報酬 | 直近1年のリターン (分配金込み) | 備考 |
---|---|---|---|
eMAXIS Slim 国内リートインデックス | 0.187% | 33.32% | 分配金無し |
Smart-i Jリートインデックス | 0.187% | 33.25% | 分配金無し |
ダイワJ-REITオープン(毎月分配型) | 0.792% | 32.46% | 毎月分配 |
新光J-REITオープン | 0.715% | 32.35% | 毎月分配 |
MHAM J-REIT インデックスファンド(毎月決算型) | 0.715% | 32.36% | 毎月分配 |
信託報酬が低く、分配金の出ない投資信託の方がリターンが若干高くなっています。
分配金を多く出す投資信託は、利回りが高いように見えますが、資産全体としてのリターンが高いわけではありません。
ですので、分配金を得たい場合は、信託報酬が低く、分配金も出るETFの方が良いのではないでしょうか。
東証REIT指数に連動するETF
ETFとは上場投資信託の略称で、市場に上場された投資信託です。
証券会社を通じて、市場から直接購入します。
指数に連動した運用が基本であり、投資先のJ-REITから得られる分配金は必要経費を除き全て投資家に配分されます。
- 市場価格を見ながら購入することができる
- 販売会社を通さないので信託報酬が割安
- 分配金をETF内で再投資できない
- 自動積立投資が出来ない。
東証REIT指数に連動するETFは10銘柄あります。(2021年7月21日時点)
信託報酬が最も少ない銘柄は次の3つです。
コード | ETF | 信託報酬 | 純資産額 | 直近1年のリターン (分配金込み) |
---|---|---|---|---|
1343 | NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信 | 0.1705% | 3,279億円 | 33.32% |
1488 | ダイワ上場投信-東証REIT指数 | 0.1705% | 1,291億円 | 33.32% |
2556 | One ETF 東証REIT指数 | 0.1705% | 410億円 | 33.27% |
(2021年7月21日時点)
いずれも年4回分配金がでるETFです。
信託報酬の低い投資信託と比べても、直近1年のリターンはほとんど変わりませんね。
投資信託 | 信託報酬 | 純資産額 | 直近1年のリターン (分配金込み) |
---|---|---|---|
eMAXIS Slim 国内リートインデックス | 0.187% | 約85億円 | 33.32% |
Smart-i Jリートインデックス | 0.187% | 約39億円 | 33.25% |
でも、0.016%差とはいえ、なぜ、信託報酬の低いETFのリターンが高くはならないのでしょうか。
「NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信」の投資目論見書に次の記載があります。
分配金を支払う場合には、投資家毎の分配金計算や振り込みなど経費がかかります。
この経費が信託報酬の差を埋めているのかもしれません。
投資信託とETFのリターンを増やす方法
信託報酬の低い投資信託とETFにはリターンの差がほとんど無いことが分かりました。
他にリターンに関する違いはないのでしょうか。
投資信託やETFにはリターンを増やす方法があります。
投資信託のリターンを増やす方法
投資信託を保有するとSBI証券やマネックス証券ではポイントがもらえるます。
ポイントで投資信託を買うことができるため、実質的な分配金としてみることが出来ます。
- eMAXIS Slim 国内リートインデックス
- Smart-i Jリートインデックス
の場合は、保有額に対し
- SBI証券:0.05%のTポイント
- マネックス証券:0.03%のマネックスポイント
がもらえます。
このポイント分を考慮するとETFより、リターンを増やすことができます。
ETFにも同じようにリターンを増やす方法はないのでしょうか。
ETFのリターンを増やす方法
ETFの保有によりポイントがもらえるサービスは現在のところありません。
しかし、ETFは貸株として証券会社に貸し出すことができます。
貸株に出すことにより、SBI証券などでは0.1%の金利収入を得ることができます。
貸株を考えるとETFは投資信託より、さらにリターンを増やすことができますね。
投資信託とETFはどっちが良いか
東証REIT指数でJ-REIT市場全体に投資する場合は、投資信託とETFのどちらを購入すると良いのでしょうか。
同じ東証REIT指数に投資しているため、REITの運用成績は変わりません。
コストである信託報酬の差は、
- 投資信託:0.1870%
- ETF :0.1705%
となり、若干、ETFが有利ですが、分配金の経費等を考えるとリターンはほとんど変わらないと考えて良いでしょう。
ポイントや貸株金利を考慮した場合には
- 投資信託:ポイント0.05%のリターン増
- ETF :貸株金利0.1%のリターン増
となり、ETFが有利になります。
しかし、ETFの分配金は受け取った時点で約20%の税金がかかります。
J-REITの分配金利回りを4%とすると、0.8%分が税金で引かれますよね。
分配金の出ない投資信託は、分配金が内部で再投資されるため税金がかかりません。
ですので、分配金を再投資して資産を増やす場合には
- 投資信託:税金を引かれず再投資
- ETF :税引き後に再投資
となり、再投資時の資産額に差が出てきます。
長期投資を行う場合、さらに福利効果が加わりますので資産額の差はどんどん開いていきます。
長期投資で資産を増やす場合は、投資信託の方が有利ですね。
J-REIT指数の投資は分配金で考える
東証REIT指数に連動する投資信託とETFについて解説しました。
- 生活改善など分配金をもらう必要があるならETFが有利
- 分配金は再投資して資産を増やすなら投資信託が有利
(分配金を出さず、信託報酬の低いもの)
となります。
以上、参考になれば幸いです。
J-REITについての紹介記事はこちらです。
【J-REITとは】投資信託で手軽に不動産投資、分散も容易で安定高利回り